校長の道徳授業

「ひとりぼっち」社会からの脱出1

2018.11.15

「絆」を取り戻すために~求められる「人権意識の進化」(1)~

 

<はじめに>

現代社会で最も大事な価値観は、基本的人権を尊重することだと考えられています。それは、「基本的人権」が「幸福追求権」だからです。「幸せになる権利」は、人間に平等に与えられていなければなりません。民主主義の基本です。しかし、日本も、そして世界も、人々の「孤独化」が進行しています。つまり、「ひとりぼっち」の社会になろうとしているのです。

「ひとりぼっち」になって幸せはありません。たまに一人になる時間は、必要です。しかし、人生そのものが「ひとりぼっち」では、生きていけません。これほどつらく、寂しく、悲しい人生はないでしょう。

なぜ、幸福追求権である「基本的人権」が時代の変遷(へんせん)とともに定着し確立されてきたのにもかかわらず、人々は幸福とは反対の「ひとりぼっち」という不幸な境遇に追い込まれているのでしょうか。

「人権の尊重が足りないからだ」という意見があるかもしれませんが、それは間違いです。なぜなら「人権」が確立する以前、人々は決して「ひとりぼっち」ではなかったからです。物質的には今より貧しく不便な生活を余儀なくされていたけれども、人々は助け合い、分かち合って、幸せを実感して生きていました。

何かが大きな転換期を迎えているのではないか。それは「基本的人権」そのものの在り方に、この難問を解く鍵が隠されているのではないか、というのが、この道徳授業のテーマなのです。

「道徳」とは、幸せになる生き方を学ぶ教科ですから、生徒の皆さんが「ひとりぼっち」で苦しんでいるなら、今すぐその境遇から抜け出せるように、そして誰もが今からの人生で「ひとりぼっち」とは縁を切った生き方ができるように、さらには、世の中全体が「ひとりぼっち」から脱出して、お互いに助け合い、分かち合う絆を取り戻して、本当に「幸福追求権」としての「人権」が確立した素晴らしい時代が来るようにと願って授業を進めていきましょう。

 

第1章 世界に広がる「ひとりぼっち社会」の衝撃

1、「ひとりぼっち社会」になってきた日本の現実

(1)「無縁社会」の恐怖

①無縁死の急増

平成22年(2010年)1月31日、NHKスペシャル番組「無縁死3万2千人の衝撃」という我が国の「無縁社会」の現実をテーマにした番組が、大きな反響を呼んだことがあります。

無縁死というのは、亡くなってもご遺体を引き取る人がいないケースのことで、年間3万2千人もいるというのです。その背景には「無縁社会」があり、家族や地域、会社などの勤務先、学校の同窓生や趣味のグループなどの絆が、消えていきつつあります。

そして、かつての3世代家族が核家族化し、さらに進んで単身化(一人で暮らすこと)が急速に進行していて、2030年には一般世帯の40%が単身世帯となると予測されているというのです。

 

②無子化の衝撃(「明日への選択」平成30年7月号「無子化の衝撃」より引用)

また、少子化の大きな原因となっている「無子化」も深刻で、20代から40代の女性の半分、男性の6割が子供を持ったことがないし、25歳から29歳の結婚適齢期の女性の34%、男性の50%が結婚相手も異性の友だちもいないというのです。

 

(2)引きこもりの長期化、高年齢化

「引きこもり」の問題も深刻です。政府の調査では54万人超となっていますが、15歳から39歳に限定 しての調査ですから全体数を表しているのではありません。

「引きこもり」の長期化、高年齢化が進行しており、複数の県が独自で調査した結果では、40歳代の引きこもり者が全体の半数を超えている場合も報告されています。働き盛りの30代や40代の引きこもりが急激に増加しているとも言われています。別の調査では、引きこもり者数は、準引きこもりを入れると300万人以上という衝撃的な報告もあります。

日本社会が急速に、国民個々の「孤立化」「孤独化」が進行しつつあるのです。つまり、「ひとりぼっち社会」になってきたということです。

 

2、孤独化の解消が世界的大きな課題

この現象は日本だけではないことを、平成30年6月6日のNHKの「ためしてガッテン」という番組で取り上げていました。「人のつながりの復活」が世界的大問題になっているというのです。

2018年1月、イギリス政府に「孤独問題担当大臣」が新設されたことも、番組で紹介していました。人権思想のいわば発祥の地であるイギリスで、世界初の「孤独問題の解決」を任務にした大臣ポストが新設されたことは「孤独化」の現象と「人権意識」との因果関係の存在を推測するに十分な現実といえると思われます。

番組では、世界的に「人のつながり」が希薄になってきて、孤独問題が深刻化した原因はスマホなどの発達で、会話に代わってメールが普及したことと結論付けていましたが、果たしてそれだけでしょうか。

それはそれで直接的な原因ではあるかもしれませんが、さらに大きな根本原因が背景にあると考えるべきです。それは、世界的規模で人権思想が新しい段階に入っているのではないかということです。 

 

3、相手の人権の尊重へ

(1)これから始まる新しい時代の人権の在り方は、自分の人権の主張から相手の人権を尊重することに重点を置く方向へ進化しなければならないと、私たちは考えています。

 

(2)今までの人権尊重は、自分の人権を主張することに重点が置かれていました。しかし、新しい時代の人権意識の方向性はその逆です。自分ではなく相手の人権を尊重するということです。

 

(3)基本的人権を尊重することは近代社会においてとても重要なことです。しかし、今のままの人権意識の在り方では、人々を孤立させ絆や共同体を破壊して、かえって人々を不幸にしてしまうという事態に世界中が直面しているのです。人権をもっと尊重するためにも、その在り方を根本的に問い直す必要が生じているのではないでしょうか。

 

(4)自分の人権ばかり主張すると自分の周りから人は離れて孤立していきますが、相手の人権を尊重すると自分の人権も尊重され、お互いに助け合い分かち合う絆がよみがえるということです。

 

(5)そもそも「人権」とは何であって、どうして生まれたのか考えてみましょう。そのうえで現代社会が直面している問題について学んでいきたいと思います。


関連記事

カテゴリー

アーカイブ

勇志国際高等学校への
お問い合わせはこちら CONTACT
0120-5931-35
イメージ