校長の道徳授業

「和して同ぜず」が日本の和の心

2017.06.15

1、はじめに

 これまで日本文化の核になっている「和」の心について学んできました。そして「和」の心とは、利己心ではなく利他心であること、わかりやすく表現すると「自分のことを後回しにできる心」だと学びましたね。

 しかし、それは決して自分の主体性を持たないということではないということを、今月のテーマにしたいと思います。主体性とは、自分の考え・立場をはっきり持って行動するような性質(国語大辞典)のことです。

 まず、日本という私たちの祖国が世界で一番古い歴史と独自の伝統文化を持っている国だということから学んでいきましょう。

 

 2、日本は世界で最も古い国

 日本の国は、紀元前660年に神武天皇によって建国(肇国)されました。以来今日に至るまで125代にわたって天皇を中心として栄えてきました。

 王朝の交代が一度もなく続いてきた国は、日本以外世界に例がありません。日本は世界で最も古い国家だということです。

 世界の歴史をひもといてみると、建国から二百年以内に滅びる国が大半を占めています。五百年以上続いた国は、世界の歴史で数えるほどしかありません。

シナ(中国)は、四千年以上の歴史があるといいますが、この間、王朝が30回も変わっています。一つの王朝の平均寿命は150年くらいでしかありません。現在の中華人民共和国は、1949年に毛沢東率いる中国共産党が蒋介石の中国国民党との内戦に勝利して建国した国ですから、2017年現在で68年の歴史ということになります。

世界で日本に次いで2番目に古い国はデンマークで、十世紀後半に初代国王ゴームがバイキングたちを統合して建国したといわれています。

三番目はイギリスで、1066年、ウイリアム一世によって建国されました。

アメリカは、イギリスとの独立戦争に勝利して建国したのが、1776年です。

フランスは、1789年、フランス革命が始まった年の建国となっています。

ロシアは、1991年、ソヴィエト連邦から独立を宣言した年から始まりました。その結果、ソヴィエト連邦(ソ連)は解体されました。

 

3、日本文明は独自の文明

 20世紀を代表する文明学者の一人であるサミュエル・ハンチントン博士によると、世界の文明を大別すると、西洋キリスト教文明、ロシア正教文明、イスラム文明、ヒンズー文明、中華文明、中南米ラテン・アメリカ文明そして日本文明の7つに大別されるそうです。  

これらの文明は、複数の国家で一つの文明圏を構成していますが、日本文明だけは日本だけの一つの国家で一つの文明圏を構成していると博士は言っています。つまり、日本文明は独自の文明なのです。

 日本には長い歴史の中で大陸から様々な文化が入ってきました。中華文明や西洋キリスト教文明などです。しかしなぜ世界のほかの地域や国々と違って日本独自の文明が発達してきたのでしょうか。実はこの点にこそ日本の文化の優れた特殊性があったのです。

 

3、「和して同(どう)ぜず」が日本文化

 論語の中に次の言葉があります。

「君子(くんし)は和して同ぜず。小人(しょうじん)は同じて和せず」(論語)

意味は次の通りです。

「君子(行いが正しく徳のある人)は、主体性を持ち人々と調和するが、無定見に同調したりはしない。小人(小人物)は、無定見に同調するが調和はしない。」(故事ことわざ辞典)

無定見というのは、自分のしっかり定まった見解がなく、他人の意見に左右されやすいこと(国語大辞典)です。

つまり、日本の和の文化は、君子の文化だということです。異質なものも拒絶せずに受け入れるけれども、日本の文化の中に溶け込ませて独自のものにして消化してきたということなのです。

例えば仏教はインドからシナを経て日本に入ってきましたね。しかしインドにもシナ(中国)にも、今や仏教は残っていません。日本でむしろ日本的に深みを増して独自の発展を遂げてきました。

儒教だってそうです。中華文明の基礎となったのが儒教ですが、シナには儒教はほとんど残っていません。日本で日本的に消化されて発展してきました。

近代では資本主義だってそうですよ。西洋で生まれ発達してきて、世界の経済を大いに発展させてきましたが、日本では「日本式経営」として終身雇用制などの独自の形態で発展し、戦後極めて短期間のうちにあの廃墟の中からよみがえり、世界の奇跡といわれたではありませんか。昭和39年、つまり戦後19年後に、東京オリンピックを大成功させるほどの経済復興をなしえたのは、日本文化に資本主義を消化して日本型資本主義としたからです。

つまり、日本に異質の文化がはいってきても、拒絶しないで調和して仲良くする。違いを認めてそのいいところは「和の文化」の中に溶かし込んできた。しかし、無定見に同調するのではなく、主体性は失わなかったということですね。だから日本独自の文明が発達し、日本一国で独自の文明圏を成すこととなったのです。

まさに「君子は和して同ぜず」が我が国の「和の文化」だということです。

4、君子は豹変した!!

しかし、どうも最近その辺が怪しくなってきていると思えてならないのです。

例えば、アメリカから言われる通りアメリカ型経営などを受け入れて、終身雇用制という日本型の経営をやめて非正規雇用を大幅に導入しましたね。その結果日本経済が低迷し、若者の雇用環境が不安定化し、すべてが悪循環に陥ってしまいました。

これを「小人は同じて和せず」というのです。逆にアメリカでは日本式経営を取り入れようとしているではありませんか。

憲法だってそうです。日本の歴史や文化も何も知らないアメリカの軍人や軍属がわずかな人数で、たった1週間で、切り貼りしてつくった英文の憲法案を直訳したに過ぎないお粗末な憲法を、今も後生大事にして「憲法守って国滅ぶ」のではないかと危惧されています。この憲法草案作りのメンバーだったアメリカ人たちが、「あんな憲法を日本では今も改正一つしないで大事にしているの?」とびっくりしているというではありませんか。日本人が「君子」であることをやめて「小人」になってはいけません。

「君子は豹変す」という言葉があります。その意味は二つあって、一つは「立派な人は過ちを犯しても、すぐにきっぱりと改める」という意味と、もう一つは「善にも悪にも態度や考えがすぐに変わる」という意味があります。

戦後の日本は、悪い方に豹変してしまって、「同じて和せず」の小人になってしまった。これでは「和せず」で、逆に友好関係も平和も崩壊してしまうことになります。主体性がない国は軽んじられ、他国に振り回され、ついには滅んでしまうのが歴史の鉄則なのです。

最近は「同じて和せず」が高じて「和せず同ぜず」という最悪の傾向が政治やマスコミの世界で表れていて、自らの手で日本を貶(おとし)めています。

若い皆さんの時代に、もう一度、今度は過ちをきっぱり改めて、本来の「和して同ぜず」の君子の文化の国に再建してほしいと願ってやみません。せめて日本人の手で自分たちの国の憲法ぐらいつくる気迫を持つことが重要だと思いますよ。それこそ「和して同ぜず」で日本が主体性を取り戻すことになると思うのです。

 

 

 

 


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