校長の道徳授業

「与える生き方」と「貰う生き方」

2017.07.15

1、あるアメリカの鉄道会社の社長の話

今年度も、通学スクーリングは5月から、本校の集中スクーリングは6月から始まりましたね。みんなで充実した楽しく思い出に残るスクーリングにしてきましょう。

スクーリングの校長道徳授業今年のテーマは表題の通りです。今月号はその大まかな骨子を掲載します。

授業をすでに受けた人は復習、まだの人は予習と思って読んでくださいね。

私は、何年か前に、たまたま書店で見つけた本を読んでとても印象に残った「小話」がありました。まずその「小話」から紹介しましょう。

アメリカのある鉄道会社の社長の話です。

ある鉄道会社の社長が、線路の修理現場を視察していました。

すると、一人の作業員が親しげに話しかけてきました。

「久しぶりだね!君もずいぶん出世したものだね。君が社長になったと聞いたときは、本当に驚いたよ」

見ると、その作業員は、約十年前に社長と一緒に作業員として働いていた友人でした。そしてその友人は言いました。

「十年前は一緒に、五十ドルの日給をもらうために働いていたのにね。君も変わったね」

社長は答えました。

「そうだったのか。君は五十ドルをもらうために働いていたのか。

私は、十年前も今も、この鉄道会社のために、そして、世の中の人たちに快適な旅をしてもらうために働いているんだ」

(「一瞬であなたが輝く奇跡の授業」比田井和孝著より)

皆さんはこの話を読んでどう思いましたか?

私は「へえ、アメリカではこういう話が教訓になるのか」とまず思いましたね。なぜかというと日本ではこの小話に出てくる社長さんの生き方が当たり前だからです。

社長さんの生き方と作業員の人の生き方の違いはどこにあるかわかったでしょう。そうですよ。社長さんの生き方は、「与える生き方」で、作業員の人の生き方は「貰う生き方」ですね。その二つの生き方のどこがどう違うのかを考えるのが今日のテーマなのです。

2、与える人生と貰(もら)う人生の違い

(1)社長の働く目的は、会社のため、お客様のため

 社長さんは、会社がもっと発展するようにと願って、自分が働くことで会社の発展に貢献しようと思って働いてきました。ですから誰も見ていなくても一生懸命働いたはずです。就業時間が終わってもやりかけた仕事は責任をもって最後までやり遂げたでしょう。いつも与えられた仕事をもっと効率よくより効果を上げるにはどうしたらよいか工夫を凝らしたでしょう。

さらにお客様がより快適により安全に楽しい旅をしていただくにはどうしたらよいか、いつも工夫を凝らしてもいたでしょう。

その結果、良い仕事ができたでしょうし、いろいろな仕事を任せられるようにもなったはずです。そして社員から尊敬されお客様から感謝され、みんなから頼りにされるようになったのは間違いありません。

 だから抜擢されて社長になったのです。

これが与える人生のだいご味なのですね。

(2)作業員の人の働く目的は50ドルをもらうため

 一方作業員の人は、日当の50ドルをもらうために働いていますから、監督が見ていないところではさぼったこともあるでしょうし、就業時間が来たらやりかけた仕事もほっぽり出して、一杯飲みに行ったかもしれません。日当さえもらえばよいのですから、会社のことも、お客様のことも特に考えることもなかったでしょうし、仕事で工夫することなどなかったはずですね。

 これでは上司は仕事を任せても不安ですし、同僚から頼りにされることもなかったでしょうね。

 (3)この生き方の違いがわずか10年で、かたや社長、かたや依然として日当50ドルの作業員という差が生じてしまったのです。

 決して作業員という仕事を見下しているのではありません。誤解しないでくださいね。線路の修復作業は鉄道会社にとっては事故防止のために最も大事な仕事です。大事な仕事だから責任感と誇りをもってやってもらわないといけないのです。日本では皆さんがそうですよ。

一方、社長さんが偉いといういうつもりはありません。今までの生き方で多くの人々に喜びを与え感謝され、社長という立場でより大きな社会貢献ができる人生が与えられたということが大事なのです。もちろん社会的地位と共に収入も飛躍的にアップしたことは言うまでもありません。

つまり、与える人生は与えられるものが最大化していくということがこの小話のポイントなのです。

 貰う人生では与えられるものは最小化していくということでもあります。

(3)日本人の勤労観は「働く=傍(はた)楽(らく)」だった。(P178)

 さっき日本では社長の与える生き方が当たり前と書きました。そのことについて考えてみましょう。

日本では「働く」とはにんべんに動く、つまり人が動くと漢字で書きますが、語源は「傍楽」です。「傍」というのは「そば」とか「かたわら」という意味でこの場合は、周の人々ということですね。つまり周りの人々を「楽」つまり楽しく幸せにするということです。それが日本の勤労観だったのです。まさに「与える生き方」ですね。

 だから大東亜戦争に敗北して、国土は焦土と化し、人々は絶望のどん底にあったけれども、19年後には東京オリンピックを成功させてしまったではないですか。それから瞬く間にアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国になった。これは世界の奇跡といわれました。

 それもそのはずです。他国の勤労観は「賃金を貰うため」、日本は「世のため人のため」ですから、社長と作業員の小話の世界版ですよ。

 与える価値観だったから富が与えられ、世界第2位の経済大国という地位まで与えられたのです。

3、何を与える人生か

与えるといっても決してモノやカネではありません。そんなもの持っていないから与える人生なんてできないとなってしまいます。違うのです。与えるものは「幸せ」なのです。

人は皆、幸せになるために生まれてきて幸せになるために生きているのです。だから最高のプレゼントは「幸せ」でしょう?

 人様に幸せをプレゼントする方法? そうですね。それが今日の結論です。

 人を幸せにする方法は「感謝」ですよ。感謝されると誰だって幸せな気分になる。

「幸せは感謝の数だけやってくる」のです。感謝して喜ばれれば、自分はもっと幸せになる。そうです。感謝で幸せを与えたらもっと大きな幸せがやってくるのです。感謝の生き方の基本は挨拶です。「ありがとう」はもちろんのこと、「お早う」や「こんにちは」などの日常の挨拶はもちろんですが、世界で一番短くて美しくて深~い言葉が日本語にあります。「はい」という返事です。

「はい」は漢字で書くと「拝」です。日本人は凄いですね。「拝」と返事をするとき、相手を拝んで感謝していたのです。

これだったら誰でもできます。「拝」と返事するとき、漢字で「拝」をイメージして応えるのです。これができる様になったら、「与える人生」にスイッチが入ったということになります。

 さあ!今この瞬間から「拝」と元気良く明るく返事をしましょう。

ほら、お母さんが君を呼んでるよ。

「拝」。

そうそう、もっと大きな声で…。


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