校長の道徳授業

主権者と憲法1

2018.05.15

1、はじめに

18歳以上になると日本国民はみんなが主権者になります。このシリーズは、主権者となる高校生のための「主権者教育」です。

主権者とはどういう意味があって、どういう権利と義務が与えられるのか、主権者になる心構えや最低限知っておかなければならない知識は何か、について学習するのが主権者教育の目的です。

このシリーズの主題は、主権者にとっての基礎知識である憲法です。

(1)主権者とは?

主権者とは「国家の意思や政治のありかたを最終的に決定する権利を持つ者」(大辞林)のことです。そして、「国家の意思や政治のありかた」は憲法に明文化されていなければなりません。

(2)主権者になって与えられる権利と義務は?

 ア、主権者の権利

   ㈠憲法改正権   ㈡一般選挙権

イ、主権者の義務

  ㈠代表者が決めたことに従う義務  ㈡国家主権を守る義務

 

2、主権者教育の最大のテーマが「憲法」でなければならない理由

(1)なぜ主権者教育の最大のテーマは憲法か?

主権者とは「国家の意思や政治のありかたを最終的に決定する権利を持つ者」のことです。そしてその国家の意思や政治のありかたは憲法に書かれていなければなりません。したがって、主権者に与えられる最大の権利は憲法改正権ということになりますから、主権者教育で最も重要なテーマは、「憲法」です。

特に、現在国会で憲法の改正について盛んに議論されています。しかし国会は、憲法改正を発議して国民に賛否を問うだけです。憲法改正は、最終的には主権者が国民投票で決めるのです。

ですから、憲法シリーズ1では、憲法についての基本的な内容を学習します。そして、日本国憲法の3大原理である「平和主義」「基本的人権尊重主義」「国民主権」について、順次、学習していきましょう。

(2)憲法とは何か

.  ①憲法とは、国家統治の根本規範となる基本的な原理原則に関して決めた法規範です。すべての法律は憲法の定める原理原則から逸脱することはできません。その審査を行うのは最高裁判所です。これを違憲立法審査権と言います。

②憲法は、国家の基本となる原理原則ですから、これを制定することは国家主権の発動として国家間で最も尊重されなければなりません。

③世界各国の憲法は、それぞれの国家にとってその土台になるものですから、歴史や文化さらには国柄などをもとに作られています。

(3)日本国憲法の成立

   では日本国憲法は、その成立過程において、「国家主権」が確保された中で、その発動として制定されたのでしょうか。そして日本の歴史や文化さらには国柄などをもとにして制定されたのでしょうか。日本国憲法の制定の歴史から学習しましょう。

①日本の敗戦

昭和20年(1945年)8月15日、日本はポツダム宣言を受諾して大東亜戦争が終わりました。我が国はアメリカ軍の無差別爆撃でほとんどの都市は焼け野原となり、広島・長崎に原爆が投下され、多くの非戦闘員である国民が犠牲となりました。加えてソ連(今のロシア)が、日ソ中立条約を一方的に破って我が国に宣戦布告するという最悪の状況の中での決断でした。

そして9月2日、東京湾に停泊中の米戦艦ミズーリ号上で、降伏文書の調印が行われ、日本は敗戦国となりました。

②占領の始まり

昭和20年(1945)8月28日、連合国(戦勝国)軍の先遣隊が、そして8月30日には連合国最高司令官マッカーサーが、厚木飛行場に到着し、米軍による日本占領が始まりました。

その後の占領政策はマッカーサーの下、「降伏後における初期の対日方針」に基づき、日本が再び連合国の脅威とならないこと、つまり日本の弱体化を目的として、徹底して実施されました。

③GHQによる憲法草案の作成と成立

   ㈠GHQによる憲法草案の作成

     GHQは、憲法改正は不可欠であると考えていた。GHQから憲法改正の指示を受けた幣原内閣は、国務大臣松本烝治を委員長とする憲法問題調査委員会で改正案を作成して提出した。GHQは、改正案は不十分なものであるとして拒否し、マッカーサーの三原則を盛り込んだ新憲法草案を短期間で作成し、政府に提出した。政府はこのGHQ案をもとに新たに「憲法改正草案」を作成し、政府原案として公表した。政府原案は帝国議会の審議を経て可決され、昭和21年(1946年)11月3日、日本国憲法として公布され、翌年5月3日から施行された。(高校日本史教科書「最新日本史」明成社)

㈡マッカーサー・ノート(三原則)

ア、昭和21年2月3日、連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサーは、総司令部(GHQ)が日本の新しい憲法草案を起草することを決め、その責任者としてホイットニー民政局長を指名し、起草に当たっての3原則を示した。それがマッカーサー・ノートである。

イ、マッカーサー三原則の要点(「最新日本史」明成社)

ⅰ天皇は国の元首の地位にあり、皇位は世襲とする。

ⅱ国家主権の発動としての戦争は廃止、紛争解決の手段としてのみでなく自衛の手段としても戦争を放棄する。

ⅲ貴族の権利は現生存者一代限りとする。

ウ、日本国憲法の平和主義は、このマッカーサー三原則中の2項の「自衛のための戦争」をも放棄するという「国家の固有の権利」(国連憲章第51条)を否定した指示に基づく。

 

(4)国家主権の発動ではなかった日本国憲法の制定

以上の通り、日本国憲法は、占領中、国家主権が奪われている中で米軍によって作られました。つまり、国家主権の発動ではなかったのです。

そして、わが国の歴史、文化、国柄などを無視してアメリカ人が英文で作った憲法でした。

戦争に負けたのだから仕方がないという意見もありますが、これは国際法でも禁止されている行為であることを忘れてはなりません。

  さらに、内容が良ければ誰が作った憲法でもいいではないかという意見もあります。しかし、決してそんなことはありません。その国の憲法は国民の誇りでなければなりません。でなければ、国民の心が憲法から離れてしまいかねません。

結果的に「立憲主義」の危機を招くのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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