校長の道徳授業

「真実はこうだ!」-日本人の誇りを取り戻すために<その6>

2015.04.20

    -裁判する権利がない時代まで裁いたやりたい放題の裁判―

内容―「管轄権(かんかつけん)(裁判を行う権限)を逸脱した違法裁判」

 

 裁判には、当然、裁判を行うことができる事件や人が決まっていなければなりません。それを管轄権と言います。つまり裁判を行う権限のことです。もしもその管轄権を無視して裁判が行われたらどうなるでしょうか。訴えられてもいないのに、裁判所が勝手に罪を作って、有罪にしてしまう。そうなったら法治国家ではありません。無法な独裁国家ですよ。

 実は、東京裁判はまさにその管轄権を全く逸脱(いつだつ)した無法裁判そのものでした。今日は、その管轄権をめぐっての東京裁判の真実を探求しましょう。

 久しぶりに「勇志号」にご登場願いましょうか。「勇志号」というのは、時間空間を超越した乗り物で、瞬時にどこへでも、いつの時代への旅行も可能な便利な乗り物です。もちろん架空(かくう)の乗り物ですよ。勇志の生徒しか乗れません。

 さあ、みんな乗って、乗って。乗ったかい?では出発進行!行き先は、昭和21年(1946年)5月13日午前9時40分。場所は、東京の極東国際軍事裁判所法廷傍聴席(ぼうちょうせき)

 もう着いたよ。ホントに便利な乗り物だなあ。ほら法廷の真ん中にある陳述台に小柄でやせ形の眼鏡をかけた人が立って、今から弁論が始まろうとしているところです。

 立っているのは清瀬一郎弁護人。東條(とうじょう)英機(ひでき)元首相の担当弁護人です。

 清瀬弁護人の弁論は、これから1時間半にわたって行われることになっています。清瀬弁護人の弁論の内容は、東京裁判所の管轄権についてです。

 

清瀬弁護人は、イヤホーンを耳にかけて、伸び上がるように熱弁をふるっています。時々メガネをはずしたり、こぶしで陳述台をたたいたりしながらこの東京裁判の不当性を主張しています。

 清瀬弁護人の弁舌(べんぜつ)が続いていますが、検事席から赤ら顔のキーナン主席検事が頭から湯気を立てるほど興奮して英語でがなり立てています。「異議あり!」と叫んでいるのですね。

清瀬弁護人の主張が、この裁判の最も核心の部分を、しかも理路整然と指摘されて、よほど癪に障ったのでしょうね。清瀬弁護人の主張は正に正論そのものであり、しかしこれを認めると東京裁判そのものが根本から崩れてしまいますから、冷静さを失くしてしまっているとしか見えません。

 清瀬弁護人の主張の重要なポイントは3つ。

 

 1点目は、日本はポツダム宣言という連合国が示した降伏条件を受け入れて降伏したのだから、勝者も敗者もこれを守る義務がある。「平和に対する罪」や「人道に対する罪」など、ポツダム宣言受諾後に考えだされた戦争犯罪は、この裁判所に裁判する権限はない。

 

 2点目は、ポツダム宣言は、大東亜戦争終結のためのものであるから、戦争犯罪も大東亜戦争の期間の行為に限られるべきであって、大東亜戦争と直接のつながりがなく既に解決し決着している満州事変の遼(りょう)寧(ねい)、黒竜(こくりゅう)江(こう)、熱(ねっ)河(か)の戦、ソ連(今のロシア)との張(ちょう)鼓(こ)峰(ほう)、ノモンハン事件などまで起訴対象にするのは、管轄権の重要な逸脱である。

 

 3点目は、タイ国は大東亜戦争中は日本の同盟国であり、連合国側の立場ではない。日本はタイ国と戦争はしておらず、したがって戦争犯罪もあり得ない。

 

 これは少し解説する必要がありますね。ここで一度勇志号に戻って下さい。

 1点目の意味は、分かりやすく言うと、例えば君たちが誰かとトラブルになっていたとしよう。その相手の方から、具体的に条件をしめして、「これを守るから仲直りしようぜ」

と言ってきた。その条件がポツダム宣言です。

 君は、その条件をみて「よし。これなら降参して仲直りしてもいいな」と思って、その申し出を受けたとしよう。これがポツダム宣言の受諾です。

 ところが、そのあとで、この条件に書いていないことを「お前は負けたのだから言うことを聞け」と言って、その約束の条件になかったことをあげて、しかもその仲直りの後でつくった「罪」で、トラブルを裁こうというのです。そんなことは許されませんよというのが第1点目。

 第2点目の意味は、その約束は、トラブルを終わらせるためのものだったわけだから、そのトラブルになっていた期間中のことだけしか裁くことはできませんよ。あなたが今裁こうとしているのは、あなたとトラブルになる以前の、もうすでに仲直りしている過去の出来事まで持ち出して裁こうとしているではありませんか。それは自分としては受け入れられませんという主張です。

 ここに列挙されている「事件」の数々は、全て既に解決して和解している事件ばかりで、大東亜戦争との直接つながりがないのです。紙数が足りないのでここで詳しく説明できませんが…。

 3点目は、あなたとのトラブルに関係なかった、しかも自分とそのトラブルの間、自分の味方だった人まで連れてきて、この人にもお前は悪いことをした。けしからんということなど、とんでもない言いがかりだという主張です。

 

 皆さん、どちらが正しいか、あえて言うまでもありませんよね。極東国際軍事裁判所には、特に「平和に対する罪」や「人道に対する罪」で訴追したA級戦犯を裁判する権限つまり管轄権はなかったのです。

 しかし、正義は踏みにじられました。ここでもう一度法廷内の戻ってさっきの続きを見せてもらいましょう。

 

 清瀬弁護人の熱誠(ねっせい)溢れる、東京裁判の最も本質的な「裁判の管轄権」に関する討論が終わったところです。

 キーナン主席検事が発言を求めて陳述台に立ちました。彼の反論はこのあと3時間半も続きます。内容は感情的で、「勝者が敗者に報復を加えることは当然ではないか」としか聞こえませんね。

 この後、イギリスのコミンズ・カー検事が反論に立ちました。彼の言ってることも支離滅裂です。児島襄著の「東京裁判上巻」で次のように表現されていますがその通りですね。

「嫌ならいやと最初に言え。いまさら言うのは手遅れだと、冷笑するかのごときである。」

 再度清瀬弁護人が反論に立ちました。しかし途中でウエッブ裁判長の「討論は本件を以て集結します」という一言で、切り捨てられました。

 「茶番劇」そのものでしたね。さあ、もういいでしょう。学校へ帰りましょう。学校でこの管轄権について裁判所が出した結論を勉強しましょう。

 この日より4日後の5月17日、ウエッブ裁判長は

 「管轄権に関するすべての動議を却下する。その理由は将来明らかにする」

として、裁判を続行しました。しかし、その後管轄権に対しての説明はありませんでした。

 

 以上が、管轄権をめぐる東京裁判の真実です。このことについては、オランダ代表のレーリング判事カが次のように批判していますのでそれを紹介して本日の授業を終わります。

 

「国際裁判所が、正義に基づいて処罰を加えることを求められているにも関わらず、自ら正義の法理を審査する権能や義務さえ与えられないで、単に戦勝国の最高司令官(マッカーサー)の定めた法規を適用しなければならない。かようなことを本裁判所が認めるとすれば、それは国際法のためにこの上なく有害なことをしたことになるであろう」(「勝者の裁き」)

 

 


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