「通信制高校に入って、本当に卒業できるの?」
「今の高校で欠席が増えているけれど、通信制に転校したら卒業できる?」
「自分で勉強を進められるか心配」
通信制高校を調べていると、「卒業率30%台」という数字と「80%を超える」という数字の両方が出てきます。
同じ「卒業率」という言葉なのに、これだけ違います。
数字だけを見ると、「結局、どちらを見ればいいの?」と戸惑う方もいらっしゃるかもしれません。
どちらかが間違っているわけではありません。分母の取り方が違うためです。この記事では、それぞれの数字が何を表しているのかを整理して、そのうえで「自分が卒業できそうな学校か」を見分けるために何を確かめればよいかをお伝えします。
「30%台」と「80%台」に分かれるのはなぜ?
よく見かける「公立14.5%、私立33.9%」という数字は、平成30年度の文部科学省のデータをもとに算出された「年度間在籍卒業率」という数え方です。一方、全国私立通信制高等学校協会の調査では、修業年限3年の課程について、新入生徒数12,202人に対して卒業生徒数9,783人、卒業率80.2%としています。
この2つは、同じ「卒業率」という言葉でも、数えているものが違います。
在籍卒業率は、1年生や2年生も分母に入ります。
在籍卒業率は、その年度の卒業者数を、その年度の在籍者数などをもとに算出した数字です。分母には、まだ卒業年度ではない1年生や2年生なども含まれます。
そのため、3年制の学校で全員が順調に3年間で卒業したとしても、その年の卒業者は在籍者全体のおおむね3分の1です。「私立33.9%だから、約7割が卒業できない」ということではありません。
一方の80.2%は、その学校に入学し、その学校を卒業した生徒の割合を見ています。「自分が入学したら卒業できるか」という疑問には、こちらの方が近い指標です。
ただし、同じ調査の標準偏差は8.7で、学校による差もあります。全体の平均が80.2%でも、検討されている学校が同じとは限りません。数字そのものより、「どの数字を、どう計算しているか」を確かめていただくほうが確かです。
途中でやめる人は、どのくらい?(中途退学率)
文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では、通信制高校の中途退学率は3.5%でした。全日制1.0%、定時制7.4%と比べると、全日制より高く、定時制より低い数字です。
少なくとも、この数字だけを見て「通信制は入ってもほとんど続かない」と一括りにすることはできません。
もちろん、この数字だけで「通信制なら続けられる」と判断できるわけでもありません。大切なのは、途中でつまずいたときに、学校がどのように気づき、支えてくれるかです。
つまずくのは、たいてい勉強そのものではありません
卒業が難しくなるきっかけは、学力とは限りません。多くは、学習の進め方や手続きのところで起こります。
レポートが1枚遅れ、次の週も出せないまま、気づくと何枚も残っている。体調が優れない日がスクーリングと重なり、それが何回か続く。転入のときに、前の高校から引き継げる単位や、卒業までに必要な単位を確かめないまま入学してしまう。生活のリズムや体調に合わない予定を組んでしまい、最初のうちで息切れする。
一つひとつは小さなつまずきです。ただ、気づかないまま重なると、卒業までの道のりが見えにくくなります。逆に言えば、早く気づけるかどうかで結果が変わります。
そのため、学校選びで聞いていただきたいのは「卒業率は何%ですか」よりも、「途中で止まってしまったとき、学校はどうしますか」のほうです。
学校説明会・個別相談で聞いてほしい5つのこと
1.卒業率は、何を分母にして計算していますか。
2.入学した生徒のうち、卒業まで到達した割合はどのくらいですか。
3.レポートが遅れ始めたとき、学校からどのような連絡や支援がありますか。
4.スクーリングに参加できなかった場合、別の日程や対応がありますか。
5.転入の場合、前の高校の単位を含めて卒業予定年月を入学前に確認できますか。
数字だけでは分からない「その学校の運用」を確かめるための質問です。答えが具体的なほど、入学後の生活も思い描きやすくなります。
千葉学習センターでは、実際にどのくらい卒業している?
千葉学習センターの在籍記録から、2023年度に高1で入学した生徒138人を追うと、2026年8月時点で121人が卒業しています。割合は121÷138×100≒87.7%です。
残る17人の内訳は、在学継続(休学を含む)9人、退学6人、除籍1人、転校1人です。87.7%は、在学を続けている9人を卒業していない側に数えた数字です。
なお、参考として、在学継続中の9人を除き、卒業・退学・除籍・転校のいずれかが確定している129人を分母にすると、卒業した割合は93.8%になります。
「87.7%だから大丈夫です」と申し上げたいわけではありません。同じ通信制高校でも、生活のリズム、体調、人との関わり方、得意なことや苦手なことは、生徒によって違います。
千葉学習センターには、中学時代に不登校を経験した生徒も、全日制高校から転入してきた生徒もいます。そのため、卒業までの学習を本人の自己管理だけに任せるのではなく、止まりそうなところは学校の側でも見ていくことを大事にしています。
止まったときに、先生がどう関わるか
▼レポートが止まったとき
レポートが遅れ始めたとき、本人が「困っています」と言えるまで待ちません。学校のほうから状況を尋ねます。何が原因で止まっているかによって、声のかけ方も、学習の進め方も変わります。
▼スクーリングに行けなかった場合
体調が優れず、予定していたスクーリングに来られなかった。そういう日はあります。
そのとき、次の回に合わせて日程を組み直すのは学校のほうです。生徒本人が代わりの日を探して掛け合う必要はありません。
行けなかった1日が、そのまま卒業の遅れにならないように、必要な面接指導の時間を確かめながら組み直します。
▼転入時に卒業までの見通しを確認する
転入の場合は、前の高校で修得した単位と在籍期間を確認して、卒業までにあと何が必要なのかを入学前に整理します。「入ってから考えましょう」ではなく、卒業予定年月まで含めて見通しを立てておく。そのほうが、あとから慌てずに済みます。
通信制高校への転入時期や単位の引き継ぎについては、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。
通信制高校から大学進学や就職はできる?
全国私立通信制高等学校協会の調査(有効回答43校・卒業生28,446人)では、卒業後の進路は、大学等31.4%、専修学校(専門課程)21.7%、就職16.4%、未定25.1%でした。
通信制高校だから進学できない、ということはありません。一方で、卒業すれば進路が自動的に決まるわけでもありません。学校を選ぶときは、卒業までの支援だけでなく、その先の進学や就職について、どんな相談ができるのかも聞いてみてください。
入学するか決めていない段階でも大丈夫です
通信制高校が、すべての生徒に合うとは考えていません。毎日学校へ通いたい人、自宅を中心に学びたい人、人との関わりを少なくして始めたい人、先生とこまめに相談しながら進めたい人。合う環境は、それぞれ違います。
「今の高校を続けるか迷っている」「通信制高校のことがまだよく分からない」「本人が相談に行ける状態ではない」。どの段階でも構いません。千葉学習センターでは、本人が同席できない場合、保護者の方だけでのご相談も、Zoomでのご相談も承っています。
「通信制高校なら何でも大丈夫」とは言えません。まずは今困っていることを一度整理して、その環境でなら無理なく続けられそうかを、一緒に確かめるところから始めていきますので、何なりとご相談ください。
運営:勇志国際高等学校(学校法人 青叡舎学院)
本記事で引用した数値の出典は、文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」、全国私立通信制高等学校協会「私立通信制高等学校 実態調査 報告書」(令和6年12月10日)、および文部科学省の高等学校通信教育に関する資料です。特別活動の要件は高等学校学習指導要領(平成30年告示)によります。学校ごとの卒業率・進路状況は各校にご確認ください。